日本ITストラテジスト協会オープンフォーラム2009 [2009年12月6日]

2019年6月10日

2009年関東支部オープンフォーラム開催レポート

日時 平成21年12月6日(日) 13時~17時
場所 ホテルはあといん乃木坂 -健保会館-
テーマ 情報戦略実現に向けた高度IT人材の役割と育成
  1.基調講演1  IT産業の見える化の取り組み」  13:05~14:00
    独立行政法人情報処理推進機構  ITスキル標準センターセンター長  
    円羽  雅春  様

    「IT産業の見える化の取り組み」という講演タイトルで
        ・ITスキル標準
        ・CDP(CareerDevelopmentProgram)
    の2テーマについてお話いただきました。

    ・ITスキル標準
        ITスキル標準の特徴
        ITスキル標準の利用方法
        ITスキル標準の利用状況(統計資料各種)

    ・CDP(Career Development Program)
        IT業界の魅力発信
            ・モデルキャリア開発図の作成
            ・Plannning HappenStance Theory(計画的偶発性理論) 
            ・人材育成ノウハウ集
            ・IT産業の紹介の紹介とIT産業の魅力
                トッププレイヤー・現場で輝いている人・女性技術者の計90名に
                実施したインタビューの回答を紹介。

2.講演1:「Hondaの情報戦略の考え方」14:00~14:50
    本田技研工業株式会社  IT部部長  
    有吉  和幸  様

    ホンダのビジネス状況と
    IT分野におけるこれまでの取り組みと今後の取り組みについて
    ご講演いただきました。

    (1)ホンダの紹介と現在の状況について
        ・本田宗一郎の夢
        ・フィロソフィー  人間尊重    三つの喜び
        ・三現主義

    (2)HondaITについて
        コンピューターで工場をシミュレーション
            車体は部品一個一個の精度で再現
            色(反射・影・映り込み)も再現
            ベルトコンベアや道具の配置を含めて人間の作業をシミュレーション可能

    (3)環境認識    変化に向けた対応
        世界的な不景気により生産量の落ち込み
        市場は北米・日本から中国・アジアへシフト
        車種は小型車にシフト

    (4)ITの方向性
      ・これまでの取り組み
            独立性・創造性を尊ぶ社風のため、地域完結の傾向
            自前のシステムが多かった。
      ・今後の取り組み
            インフラ
                量の効率化を図れるような仕組みの構築
                ERPの導入・展開
                資産活用にはクラウドの構想
                    ローカルクラウドグローバル統合
                    (ヨーロッパ・USA・日本)で24時間365日の対応

            ビジネス:
                迅速性・柔軟性を重視し、仕組よりもサービス提供

            人材の活用
                ・「教育IT塾」など人材育成にも取り組み
                ・グローバルCIO人材の強化
                ・上流に重点をシフト
                ・ビジネスプロセストを知る人を育成


3.JSAG講演1:「新生JISTA宣言」15:00~15:10
    (日本システムアナリスト協会会長  安藤  秀樹)

        1999年3月の日本システムアナリスト協会の発足から
        2010年2月から日本ITストラテジスト協会へ生まれ変わる
        にいたった経緯について、講演を行いました。




4.JSAG講演2:「SABOK編纂状況の報告」15:10~15:30
    (SABOK研究会  リーダー  田中  浩之)

        SABOKの編纂の現状と今後の課題について
        講演を行いました。
    
        1.SABOK編纂の背景
        2.SABOKの目的
        3.SABOK編纂の方針
        4.SABOKの記述構成
        5.SABOKの記述様式
        6.SABOKの活用例
        7.SABOKの実施状況
          ・進捗率80%、80ページ程ができている。
        8.今後の課題(v1.0編集後)
          ・会員内の活用
          ・会員外の活用

5.パネルディスカッション
        「情報戦略実現に向けた高度IT人材の役割と育成」

(1)パネラーの略歴・自己紹介

    ・NECソフト株式会社ITトレーニングセンター長 福嶋 義弘様
        【ご略歴】
            ・1978年:日本電気ソフトウェア株式会社に入社
              現在はITトレーニングセンター センター長
            ・2008年:IIBA日本支部代表 など

    ・株式会社スキルスタンダード研究所  代表取締役  高橋 秀典様
        【ご略歴】
            ・1993年:オラクルに入社
              システム開発から人材育成にシフト      
            ・2003年:ITSSユーザー協会設立    専務理事
            ・現在  :UISS委員会委員 など

    ・株式会社みずほコーポレート銀行 ITシステム統括部 調査役 三木 由美子様
        【ご略歴】
            ・1997年:株式会社帝国データバンクに入社
            ・2001年:システム企画チームに異動
            ・2006年:株式会社みずほコーポレート銀行に入社
            ・現在  :IT資産マネジメントプロセスの企画推進 など

    ・JSAG会員代表  株式会社ビバーク  代表取締役  大家 正巳
        【ご略歴】
            ・2001年:JSAGに参加
            ・現在  :株式会社ヴィバーク代表取締役
               経営とITの両方を経験

(2)ディスカッション(敬称略)

(安藤)
    スコープを次のように定める。
        ・レベル5以上の人材をどう育ててゆくか
        ・超上流(コンサル・プロマネ)の話題

(安藤)・レベル5以上の人材育成について、どのように考えるか。

  (福嶋)・経験が必要と考えるが、実際に経験させるにはリスクも伴う。
            ケーススタディにとどまる場合が多い。
          ・定年者の経験をどう引き継ぐがという、技術継承がポイントである。
  (高橋)・「中堅の問題」教育されていない、経験していない。
            技術の「とがった」部下をうまく指導できない場合がある。
            経営的に余裕がない状況で、教育を先導する人がいない。
  (大家)・「ジェネレーションギャップ」と言われるが他業界も同様である。
            ただし、IT業界の場合、ある時期から「技術だけ」に純粋培養され
            ビジネスセンスが欠落するケースが見られる。
            マネージャ等の役職になったときに困る。
  (三木)・高度人材にはビジネス知識とIT知識の両方が重要であるが、
            それを育成するには、ローテーションと適切な人事評価に課題がある。
            IT部門の者が経営への提言できるように育成するのはハードルが高い。
  (大家)・経験できる環境を用意し、企業がリスクテイクをする必要がある。
            経験とは具体的には
                ・お金を扱う(肌身で感じる)経験
                ・組織で揉まれ、立ち回る
                ・販売、売ることの重み、大変さ
                ・長く、お客様と付き合う
                ・修羅場を乗り越える
            のことを指す。

(安藤)・IT業界では人材育成を、プログラム開発ではなく
        システム運用から始めるべきではないか。

  (福嶋)・ITSSのキャリアパスがあるので製造から始めても問題ない。
            ローテーションの用意はしているが、リスクも大きい。
            長く続けることで信頼を得る事が大事である。
            ベンダーに運用視点が弱く、運用はユーザ任せとなっている場合が多い。

(安藤)・高度人材の育成の中で会社がやるべきことと、
        個人がやるべきことがあると思われるが、これについてどうか。

  (高橋)・JSOXやISOなどは企業がやるべき点である。
            ただし、ルールが増えと、自主的な改善が反比例して少なくなっていく。
            ITSS導入するなど、社員がなりたいものへのパスが見えるものを
            企業が用意する。

(安藤)・社内にモデルにするべき人材や中堅が少なく、仕事の「仕方」を
        ディスカッションする場がなくなっているのではないか。

  (三木)・失敗事例の共有(再発防止レビュー)がある。
        
  (福嶋)・「なぜ×3」活動を行っている。
            失敗事例の共有もしており、修羅場の経験に代用になりうる。
            成功事例の共有もしているが、やるべきことを粛々とやった場合が多く、
            ネタになりにくい。
  (高橋)・リクルートのIT部門にITSSを導入し、見える化の効果を上げた。
            スキルのマッピングを行うと、中堅以上と若手の差が可視化され、
            スキルや経験を伝えるためのコミュニティが多数できた。
            引っ張っていく人のリーダーとしての使命感、
            参加メンバーのモチベーションアップが見られた。

(安藤)・ITSSを企業に導入することについてどう思うか。

  (大家)・俯瞰的に利用するのに役立つ
            レベル4以上の人材にとって、目指すイメージ像が見えることが有用。
            レベル3までの人材にとっては、習得すべき知識がわかることが有用。

(安藤)・人と人を関係で、会社の中でできないこととしては、何があるか。
    
  (福嶋)・社外人脈を作るのは会社ではできない。
          ・(ある程度のレベルまでの成長には「真似」が有効だが、)
            「真似」でハイパフォーマーになることはできない

会場質問1
  (村山様)・Googleでは人的コミュニティのデータを活用するために
              統計分析の専門家を採用している。
                ・人的コミュニティをどうマネジメントするべきか。
                ・分析専門家の育成はどうするべきか。
    
  (福嶋)・人間力と技術力を併せ持つ人材、ファシリテーション力に
            フォーカスするのが重要
          ・分析の専門家は、社内では難しく、社外から取り込みたいと思っている。
  (高橋)・採用方針に関連する事例として、Oracle社の例を紹介する。
            インドの技術者を雇い、コアの技術を学ばせ、
            1年~1年半で仕事を持ち帰らせた。
            通常コアを外に出すことはしない。
            (Googleの例と同様に)採用方針に、経営者の判断が現れた例だと思う。

会場質問2
  (秋山様)・高度人材が限られている中で、レベル4以上の人材を
            ユーザ企業・ベンダー企業のどちらに配置するべきか。
    
  (三木)・ユーザ企業にこそ必要である。
            ただし、個人のキャリアプランとの折り合いにも留意する必要がある。 
  (大家)・ユーザ企業にこそ必要。
            IT投資について適切な判断ができる人材が必要である。
          ・ただし、人材育成の視点から見ると
            ITのプロ経営のプロ  ではなく、経営のプロITのプロの
            パスの方が早いのでは?

  (秋山様)・高度人材が限られている中で、少数精鋭で業務をまわすには
            どうしたらよいか。
    
  (大家)・むしろ、少数なほど権限委譲がしやすいため、まわしやすいと考えている。

(安藤)・最後に一言ずつ頂きたい。
    
  (福嶋)・主体的に働けるIT技術者を育成することが必要である。
  (高橋)・「高度IT技術者の定義」がユーザとベンダーで異なっていると言える。
  (三木)・ビジネスのコアスキルを一通り備えられるパスを
            会社で用意するのがよいのではないか。 
  (大家)・高度人材になればなるほど  IT以外のスキル・センスが占める割合が
            多くなってくる。