JISTA関西支部 25年12月度定例会 日本技術士会近畿本部情報工学部会 合同定例会
2025年12月13日(土)、JISTA関西支部12月度定例会は、日本技術士会 近畿本部 情報工学部会および日本ITストラテジスト協会 関西支部との合同例会として開催されました。
本合同開催は、技術士・ITストラテジストそれぞれの専門性や視点を持ち寄り、より多角的に「ITと社会」「ITと人のキャリア」を議論する場をつくることを目的としたものです。会場(大阪中央会館)とオンライン(Zoom)を併用したハイブリッド形式で、多様な立場の参加者が集いました。

日本技術士会 近畿本部 情報工学部会とは
日本技術士会 近畿本部 情報工学部会は、情報工学部門に登録している日本技術士会の会員/準会員からなる組織で、高度情報化社会の進展に対応し、部会員の技術力向上、人的交流の促進、最新情報の共有を通じて、情報工学分野の技術士としての資質向上と社会貢献を目指すことを目的とし、DXやAIといった先端技術から社会インフラまで幅広い領域を対象としています。部会では、講演会や研究会を通じて、実務と理論の両面から継続的な研鑽と交流を行っています。
講演1:AI・ロボット時代のキャリア戦略
講師:岡崎 哲三 氏(日本技術士会近畿本部 情報工学部会)
講演1では、情報工学分野の技術士であり、中小企業診断士・MBAとしても活動されている岡崎哲三氏より、「AI・ロボット時代のキャリア戦略」をテーマにお話しいただきました。
自身のエンジニアとしてのキャリアと、社会人大学院での学び直しの経験を交えながら、AI・ロボットの進展が仕事や雇用に与える影響を多角的に整理されました。
講演では、近年話題となっている「AI失業論」について、国内外の調査やデータを引用しながら冷静に分析が行われました。職業そのものが一気に消滅するという単純な構図ではなく、仕事の中のタスクが変化し、求められるスキルが置き換わっていくという視点が強調されました。特に、求人ビッグデータや世界経済フォーラムの報告をもとに、高度な専門性を持つIT職種の需要がむしろ高まっている点は印象的でした。
また、過去の産業革命やIT革命の歴史を振り返り、「仕事が変わること自体は今に始まった話ではないが、変化のスピードが決定的に速くなっている」という指摘もありました。その上で、AI時代において人間が担うべき役割として、①意思決定と責任、②ビジョンの創造、③共感と協調、という3つの能力が提示されました。
質疑応答では、「仕事が楽になる、とはどういう価値観か?」という問いに対し、楽になるという点のみにおいてはAIを活用して面倒な作業や繰り返し作業がなくなるということだが、その分AIを活用するために倫理的なことはもっと学ばなければならない、という考えが示されました。また、AIに意思決定を任せる未来については、「正確さはAIが担えても、責任を引き受け、人が納得できる形で判断する役割は人間に残る」というコメントが印象に残りました。
JISTA関西支部とは
続いてJISTA関西支部の紹介があり、情報ストラテジストを中心に、技術士、中小企業診断士、セキュリティやプロジェクトマネジメント分野の有資格者など、多様なバックグラウンドを持つ会員が集い、実務に根ざした議論や相互研鑽を行っていること、他団体との交流や合同開催も積極的に行い、専門領域を越えた視点の共有を大切にしていることが紹介されました。
講演2:無線での通信と給電 〜部屋とワイヤレスと私〜
講師:三木 哲郎 氏(JISTA関西支部)

講演2では、三木哲郎氏より、無線通信とワイヤレス給電の技術をテーマに、基礎から最新動向、社会実装の課題まで幅広い解説が行われました。
「ワイヤレス」と一言で言っても、通信と給電では評価指標や難しさが大きく異なること、また給電方式には放射型と結合型(誘導・磁界共鳴・電界結合)があり、用途によって最適解が変わることが丁寧に説明されました。
EVやバス向けのワイヤレス給電の事例では、効率は思われがちなほど低くなく、実用水準として85%を目指しているという点が紹介され、参加者の関心を集めました。海外ではタクシーでの活用事例もあり、社会実装が徐々に進んでいる様子が共有されました。
質疑応答では、万博での給電実証、情報と電力を同時に扱う技術の今後等、専門性の高い質問が相次ぎました。人体への影響や盗電対策についても、基準値を前提とした設計や認証の仕組みが重要であり、技術だけでなく制度・安全設計が普及の鍵になる点が強調されました。
講演3:炎上プロジェクトと再現性 〜それが大事〜
講師:前田 一暁 氏(JISTA関西支部)

講演3では、PM/PMOとして数多くの炎上プロジェクトに関わってきた前田一暁氏より、実体験に基づく非常に実践的な講演が行われました。
前田氏は、炎上プロジェクトに共通する問題として、「意思決定」「品質基準」「情報共有」という3つの再現性が欠如している点を指摘しました。
具体的な事例として、SaaS移行案件やスマートファクトリー化プロジェクト、新規ビジネスのPMO立ち上げ支援などが紹介され、いずれも同じ失敗が繰り返される構造があることが示されました。炎上対応では、まず短期的に復旧を図り、その後に意思決定ルールや基準を再定義する“再キックオフ”に近いプロセスを経て、最終的に定着させていくことが重要だと説明されました。
質疑応答では、「失敗するPMの見抜き方」として、夜中にメールを送る人や、期限と成果物を意識しない人が挙げられ、会場から共感の声が上がりました。また、炎上プロジェクトに入った直後に心がけていることとして、「まず根気よく話を聞くこと」「自分自身が炎上しないこと」「声の大きさではなく本質的なキーマンを見極めること」といったリアルなコメントが印象に残りました。
講演者 講演1:岡崎哲三 氏(日本技術士会近畿本部 情報工学部会)
日時 2025年12月13日(土) 14:00 〜 17:00
場所 会場:大阪中央会館
オンライン:Zoomオンライン会議
