JISTA関西支部2025年11月度定例会 京都特別講演「500系新幹線の開発秘話」/グループワーク
2025年11月24日(月・祝日)、JISTA関西支部2025年11月度定例会を開催しました、今月は二部構成。
まず第1部は京都特別講演として、講演者は京都鉄道博物館副館長の松井 元康さん、タイトルは『山陽新幹線の歴史と500系新幹線開発秘話』。
次に休憩を挟み、第2部としてグループワークを開催しました。

第1部 「山陽新幹線の歴史と500系新幹線開発秘話」
■ 山陽新幹線50年の歴史
講演の前半では、まず1975年当時のダイヤグラムをもとに、「ひかり」に追い越される「ひかり」という、一見不思議な運行構造が紹介されました。当時は東京発「ひかり」が中心で大阪始発の本数が少なく、限られた本数の速達タイプの「ひかり」に利用が集中していたことが、ダイヤ上の工夫や課題として浮かび上がります。そこには、新大阪〜博多間における所要時間短縮という長年のテーマがありました。
0系から100系、さらに300系へと世代を重ねる中で、最高速度の向上だけでなく、利用者が実際に感じる「体感速度」の変化も丁寧に解説されました。また、福岡空港の地下鉄直結やスカイマークの就航といった、航空との競争環境の変化も、山陽新幹線の戦略を語る上で欠かせない要素として触れられました。
その後、「のぞみ」中心のダイヤへの転換や「ひかりレールスター」導入などの施策により、利用率がV字回復していくプロセスが示されます。現在、東海道・山陽区間では、のぞみ・みずほ・さくらを合わせて1時間あたり最大9本もの列車が走る過密ダイヤが実現していますが、その裏側には、こだまとして走る500系車両の高い加減速性能と、それを前提とした緻密なダイヤ設計があることが印象的でした。
■ 500系開発の裏側
後半では、「より速く・より静かに・より快適に」というコンセプトのもと進められた500系開発の舞台裏が紹介されました。高速化に伴う車輪の蛇行動の克服や、空力的に導かれた約15mの先頭形状の採用、アルミハニカム材による軽量化など、工学的な工夫が随所に盛り込まれていたことが語られました。
パンタグラフ騒音の低減では、試験車WIN350による深夜の走行試験や多数の形状比較を経てT字型パンタグラフを採用したこと、また「ふくろう」や「カワセミ」との類似は偶然であり、実際には理論に基づく形状であるというエピソードも印象的でした。さらに、乗り心地向上のためにセミアクティブサスペンションが導入されるなど、500系がその後の新幹線技術に大きく貢献したことが強調されました。
最後に、償却期間13年を大きく超えて現在も走り続ける500系の長寿に、会場から驚きの声も上がりました。

第2部 グループワークによる「学生時代の私の夢 〜原点からこれからのアクションへ〜」
第2部では、参加者が5つのテーブルに分かれ、ワールドカフェ形式で「学生時代の私の夢」をテーマに語り合いました。3ラウンドに分けて進行し、各班長がファシリテーションと記録を担うことで、どのテーブルも自然に会話が広がっていきました。
最初の「原点を語る」ラウンドでは、学生時代に抱いていた夢や、そのきっかけ、影響を受けた人物、当時大切にしていた価値観など、普段の自己紹介ではなかなか触れない個人的なストーリーが語られました。誰もが一度は思い描いた「原点の夢」に触れることで、各テーブルには温かな空気が流れ、初対面同士でも安心して話し合える雰囲気が生まれました。
続く第2ラウンドではテーブルシャッフルを行い、「夢と現在のキャリアのつながり」をテーマに対話を深めました。学生時代の夢そのものは実現していなくても、その時に芽生えた価値観や興味が現在の進路を方向づけていたり、別の道を選んだ“転機”が今の仕事につながっていたりと、多くの参加者の中で“夢の延長線上にある現在”が浮かび上がっていきました。子どもの頃に描いた夢とは違う形で、結果的にその一部を叶えている人が多いことも印象的でした。
第3ラウンドでは、これからのアクションをテーマに再びメンバーを入れ替え、個人として取り組みたいことや、JISTAの仲間と一緒に実現したいことを付箋に書き出しました。最後に各テーブルが“推しアクション案”を発表し合ったことで、支部として今後チャレンジできそうな取り組みの種が多く生まれ、参加者同士の新たなつながりも育まれました。

【主な内容】
●1975年当時のダイヤにみる山陽新幹線の課題と新大阪〜博多間の所要時間短縮の歴史的背景
●0系〜300系への進化と航空との競争により進んだ高速化と戦略変化
●500系開発における空力設計・軽量化・騒音対策など工学的挑戦
●ワールドカフェ形式で「学生時代の夢」と現在のキャリアのつながりを対話
●子どもの頃の夢が形を変えて現在に活きているという気づきが多く得られた
講演者 松井 元康 氏(公益財団法人交通文化振興財団 京都鉄道博物館 副館長)
日時 2025年11月24日(月・祝日) 14:00 〜 16:45
場所 会場:京都市生涯学習総合センター山科(アスニー山科)
オンライン:なし(会場開催のみ)
